ドイツ随一の日本人街があるデュッセルドルフにある「恵光寺」。
美しい日本の伝統建築であるお寺の本堂や日本庭園は、ドイツ在住日本人にとって、まるで日本に帰ってきたかのような、懐かしい気持ちにさせてくれます。
そして恵光寺は日本人だけでなく、各地から多くの観光客が訪れる人気スポットでもあり、デュッセルドルフの重要なシンボルのひとつとなっています。
ヨーロッパでも日本の伝統や儀式に触れることができる恵光寺。そしてその歴史ある恵光寺を含む「恵光日本文化センター」で2023年2月、日本の職人さんによる畳の表替え作業が行われ、ODEKAKE.deで取材させていただきました。
この記事でわかること
- 恵光寺について
- ドイツで七五三やお初参り
- 畳職人によって受け継がれる伝統
デュッセルドルフの恵光寺
「恵光寺」はリトルトーキョーと呼ばれるドイツ・デュッセルドルフにある、欧州最大の寺院です。
EKO-HAUS(ドイツ惠光日本文化センター)の門をくぐると、美しい日本庭園が現れ、その庭園の正面には浄土真宗の仏教寺院「恵光寺」の姿が。
恵光寺は浄土真宗本願寺派形式のお寺でありながらも、「すべての仏教徒に開かれた寺」とされ、宗派を超えて多くの人々が訪れます。またそれは、仏教徒のみならず、他宗教、多国籍の人々と交流を持つことで、日本の伝統文化を伝えるヨーロッパとの架け橋ともなっています。
場所
デュッセルドルフで多くの駐在日本人が住んでいるOberkassel(オーバーカッセル)エリアに位置し、最寄り駅(Niederkasseler Kirchweg)を降りて徒歩3分ほど。
EKŌ-Haus der Japanischen Kultur e.V.
Brüggener Weg 6
40547 Düsseldorf, GERMANY
▶ 公式サイト
EKO-HAUS(惠光日本文化センター)
恵光寺を含むEKO-HAUS(ドイツ惠光日本文化センター)では、館内で様々な展示や催し物が行われ、年間を通して日本人はもちろん多くのドイツ人や外国人が訪問しています。
▶ 開館・展示案内
▶ お問い合わせ先
ドイツで七五三
近年、コロナ過や世界情勢、原油価格高騰などの影響により、海外在住者はなかなか一時帰国がしづらい世の中になっています。それでも子供の成長を祝う、日本伝統の儀式は行いたいものです。
恵光寺では日本伝統である子供の七五三法要も行われています。ドイツにいながら日本庭園で見るお子様の晴れ姿。子供が実際に育ったドイツで参拝ができるのも貴重な思い出になることでしょう。
その他、初参りやご懐妊奉告なども
赤ちゃんの初参り
日本では赤ちゃんが産まれたら行う最初の儀式、「お宮参り」。この言葉の方が馴染みがありますが、神社で行うのがお宮参り。お寺での初参りは「初参式」と呼ばれます。
赤ちゃんが産まれて初めてのお寺参り。ドイツで産まれた赤ちゃんや、日本でお参りに行けなかったご家族など、これからの健やかな成長を願って、恵光寺なら初参りも可能です。
▶ 初参式について
ご懐妊奉告法要
ご懐妊された場合の、「ご懐妊奉告法要」も大切な儀式のひとつ。ドイツでご懐妊の喜びと感謝を仏様に報告するご懐妊奉告法要も恵光寺で行われています。
その他
大晦日の除夜の鐘、初詣などの催しなども。
さらに仏前結婚式も行えるそうです。
職人技による畳張替え
2023年2月、恵光寺では18年ぶりに畳張替え作業が行われました。日本文化の象徴ともなっている畳は近年、海外でもその魅力に魅了される人が増えています。
その畳の張替え技術の一部をODEKAKE.deで現地独占取材させていただきました。
限られた技術を持つ人だけができる手作業
畳は、表面である畳表(たたみおもて)と、中側の芯である畳床(たたみどこ)、縁取りの畳縁(たたみべり)の3つから構成されています。
今回、恵光寺の本堂や、日本家屋の計100枚以上の畳の表替えのため、岐阜県より3名のベテラン畳職人が渡独されました。日頃の表替え作業はお手のモノな皆さんも、今回の仕事にはかなり緊張感を持たれていたそうです。
それもそのはず、「通常はスピード性能を持つ機械で、畳を縫い込んていくが、そんな巨大な機械は海外に持ち込めない。今回はほぼすべて手作業で行います。」と説明してくださいました。
怪我人が出たら計画が延期に
「現在、日本で手作業で畳製造を行っている畳屋はほとんどないでしょう。」と語るのは今回のリーダーである、山田さん。
固い畳床に、新品の香り良いイ草の畳を、太い針で慎重に縫い付けていく、集中力と体力のいる仕事。「期限は約2週間。3名のうち誰か一人でも怪我をすれば、作業が遅れ、期限に間に合わない。」
日本では3人で手作業のリハーサルも行い、ドイツでの本番に挑んだそうです。
代々受け継がれる日本文化
恵光寺の畳替えに日本から渡独したのは、こちら3名の職人さんです。
18年前に山田さんの先代、そして名和さんの先々代が惠光日本文化センターでの畳替え作業を行ったご縁と、その技術が認められ今回の仕事に繋がったそうです。
畳は日本独自の文化で、かつては日本での生活に欠かせないものではありましたが、現在では一般家庭の住居が新築で建てられるとき、畳の部屋のスペースがあるのはほんの僅か。
その畳文化の縮小による葛藤を持ちながらも、伝統文化を守り、先代、先々代からのご縁を受け継ぎ、その職人魂と技でここドイツ「惠光日本文化センター」の畳に新しい命が吹き込まれました。